厚生労働省と聞くと、国家公務員でお堅いイメージを想像される人も多いでしょう。
厚生労働省ではどんな仕事をしているかよく分からないと思う人も多いかもしれません。
実は厚生労働省も一般企業と同様に、理系採用に注力しています。
本記事では厚生労働省の理系採用について、職種や採用の流れを確認しながら分かりやすく解説します。
最後まで読んで頂くと、厚生労働省がなぜ理系人材を必要としているか分かるようになるでしょう。
厚生労働省とは?
厚生労働省は日本の行政機関のひとつであり、2001年に厚生省と労働省が統合して誕生しました。
健康や医療、子育て、介護、労働などを所管しています。
まずは厚生労働省について、概要を確認していきましょう。
国民生活の保障・向上を目指す
厚生労働省では社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上と増進を担当しています。
主な組織は以下の通りです。
- 健康局:保健所を通じた地域保健の向上、糖尿病やガンなどの生活習慣病の対策
- 医政局:高齢化や疾病構造の変化に対応するための良質で効率的な医療体制の実現
- 子ども家庭局:児童の心身育成や発達の援助、虐待の防止等
その他にも色々な組織がありますが、総じて国民生活の保障と向上を目指しています。
分かりやすくいうと、国民の生活の質(Quality Of Life:QOL)を上げることを目的とした組織です。
経済の発展を目指す
厚生労働省は国民の生活水準を上げるために活動しています。
生活水準を上げるためには、日本企業がグローバル競争で生き残り、経済発展していくことが重要です。
経済発展を促す組織には、以下があります。
- 労働基準局:労働法県の改善、労働者の安全と健康の確保
- 職業安定局:雇用の安定、再就職の促進
- 雇用環境・均等局:ワークライフバランスの改善、非正規雇用労働者の待遇改善
主に日本の働き方について、改善と改良を目指しています。
グローバル競争で生き残るために、日本企業でのDX推進を進める動きも加速しており、今後の施策に注目です。
厚生労働省が理系採用に注力する理由
日本企業の多くが理系採用を強化しており、採用競争は激化しています。
厚生労働省も数理・デジタル系、技術系、薬学系といった理系採用を強化中です。
なぜ厚生労働省が理系採用を強化するのか、それぞれの部門に分けて考えていきましょう。
日本のDXを推進するため
2022年現在、日本企業の多くはデータとデジタル技術を最大限に活用するというDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。
ITやIoT、ビッグデータ、AIといった言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、グローバルな視点で考えたとき、日本のDXは大きく遅れているのが現状です。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した世界デジタル競争力ランキングでは、日本は27位と低迷しています。
参考:https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/8f7f56aaed9d2af4.html
低迷している日本のDXを推進するため、厚生労働省では数理・デジタル系の理系採用を強化中です。
実際に厚生労働省の業務も、医療データのビッグデータを活用するなど、デジタル化が進んでいます。
日本の産業競争力を支えるため
厚生労働省は日本の労働力を支えるための機関です。
働く現場で怪我をする人は年間に11万人を超え、約1,000人が命を落としています。
これらの労働災害は工場や化学プラント、建設現場などあらゆる現場で発生しているのです。
職場では長時間の残業による過労死や、仕事のストレスによるメンタル不調なども問題となります。
こういった労働災害を防ぎ、安心で快適な職場作りを支えることで、日本の産業競争力を支える役割を担うのが厚生労働省です。労働災害やメンタル不調の問題は、データを分析することで、原因と対策を練ることができます。
厚生労働省では数字に強い理系人材を確保することにより、職場の安全と安心を高めて、日本の産業競争力を下支えしたいと考えているのです。
日本の「生きる」を支えるため
厚生労働省は日本の健康や医療を支えるための機関です。
地域医療を支えたり、医薬品や医療機器産業におけるイノベーションを支えるためには、理系人材が重要な存在だと言えます。
また食品添加物の指定や、日常生活における化学物質のリスク評価も厚生労働省の仕事の一つです。
日本の「生きる」を支えるためには、蓄積されたデータを読み取り、論理的に対策を講じることができる人材が必要となります。
厚生労働省にとって、数字に強く、論理的思考力に優れる理系人材は、必要不可欠な存在だといえるでしょう。
厚生労働省の理系総合職
厚生労働省では、国民の仕事や健康を守るために、蓄積されたデータを活用することが求められます。
データの活用や論理的思考力は理系人材が得意とする分野です。
厚生労働省が募集する理系総合職の特色について確認していきましょう。
数理系総合職
従来の数理系職は国民のニーズを見極めるために、シミュレーションを科学的根拠に基づいて行うことが求められてきました。
出生や死亡、世帯構成、健康状態、就業状況など、あらゆる要素を数理科学的に読み取る力が必要です。
近年では医療、介護、年金等の社会保障分野でデジタル化が急速に進んでいます。
医療の受診データや健康診断等の情報がビッグデータとして整備されており、今後は分析や利活用の重要性が高まってくるでしょう。
厚生労働省におけるデジタル活用の担い手となるのが、数理系総合職です。
従来の数理科学的能力と共にデジタル分野の能力が必要となります。
技術系総合職
理系職と聞くと、実験を繰り返したり、関心を持ったことを探求し続けたりといったイメージを持つ人も多いかもしれません。
厚生労働省の技術系総合職は、いわゆる一般的な理系職とは対極的です。
前述したとおり、厚生労働省は日本の産業競争力を支えるための機関です。
労働災害を予防するための法令整備、メンタルヘルスを向上させるためのガイドラインの創設を蓄積されたデータを基に合理的に行うのも、厚生労働省の技術系総合職の仕事です。
日本の技術力を世界に伝えたり、発展途上国から外国人技能実習生を受け入れたりもしており、日本と世界をつなぐ役割を担っています。
薬系総合職
医薬品行政や食品安全行政などを中心に活躍するのが薬系総合職です。
薬学部出身の理系人材が多く採用される職種であり、日本の医療や食品安全を守るための役割を担います。
日本では毎日のように新たな商品や薬が開発されていますが、その全てが国民の健康に害がないとは限りません。
厚生労働省の薬系総合職は、医薬品や食品、化学物質などが人体に与える影響に着目した国民の健康保持に関する制度作りを行い、安全な医療を届けるための仕組み作りを行っています。
まさに日本国民の「生きる」に関わるさまざまな分野を担当するのが、厚生労働省の薬系総合職の仕事です。
厚生労働省の理系採用の流れ
厚生労働省は「ゆりかごから墓場まで」という言葉が表す通り、日本国民の一生に寄り添う行政機関です。
厚生労働省の理系採用がどのようにして行われているのか、実際の流れを確認していきましょう。
業務説明会の実施
医療・介護、子育て支援、年金、雇用・労働、福祉など幅広い分野の課題を担当する厚生労働省は、業務が多岐に渡るため、毎年理系人材向けの業務説明会を実施しています。
職務内容や職場の雰囲気を紹介するために、各種業務説明会の他に若手職員との交流の場や、個別相談会など多くのイベントがあるのが特徴です。
業務説明会は一般企業の会社説明会と同様の場だと考えてよいでしょう。
採用試験
業務説明会の後は、インターネットによる受験申込みを経て、採用試験に進みます。
まず受験するのが第一次試験です。
第一次試験では、公務員として必要な基礎的な能力を計る基礎能力試験、必要となる専門的知識についての専門試験を受験します。
合格すれば、次は第2次試験です。
第2次試験では、人柄や対人能力を見る人物試験と、胸部疾患や血圧、尿など内科系検査を行う身体検査を行います。
毎年6月後半には合格者が発表される流れです。
官庁訪問
採用試験に合格すること=厚生労働省に採用されることではありません。
採用試験に合格したあとは、厚生労働省を訪問し、採用面接を受験することが必要です。
官庁訪問は、職員との面接を通じて厚生労働省についての知識を深める場ともなります。
官庁訪問の際の面接で内定が出ない限り、厚生労働省で働くことはできないため、理系総合職を目指す人にとって、最後の難関です。
まとめ
厚生労働省は人々の健康や労働に関わる、まさに日本国民の「生きる」を支える機関です。
健康や労働に関するビッグデータは整備されつつあり、厚生労働省でも数字に強く論理的思考力に長けた理系人材の採用ニーズが高まっています。
理系人材を巡る採用市場では、一般企業と同様に強力なライバルになるかもしれません。
今後も厚生労働省が行う理系採用を注視していきましょう。