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「ETLV(従業員生涯価値)って何?」「ETLV(従業員生涯価値)を考えて何か意味があるの?」
そのように考えている採用担当者は多くいます。この記事ではETLV(従業員生涯価値)について解説します。
ETLVは、従業員の価値を導き出す手法です。価値を導き出すことで、採用をより効率的に運用できるようになります。
ETLVを考える際に知っておきたい「計算式」の他、「高めるための方法」も紹介します。
ELTVとは従業員生涯価値のこと
ELTVとは「Employee LifeTime Value」の略で、在籍期間と組織に対する従業員の貢献度を推定したものを指します。縦軸と横軸を使ってグラフのように表せます。「成果」「在籍期間」を使って、その従業員の価値を導き出すのです。
ただし、従業員は在籍タイミングで大きく貢献度が変わります。以下の3つの時期で評価を分けて考えましょう。
- 採用~独り立ちまで
- 独り立ち~退職の決断をするまで
- 退職の決断~退職まで
採用~独り立ちまで
まず、「採用〜独り立ちまで」の期間で区切ります。ほとんどの人は、採用後に1人で成果を十分に出せる独り立ちへ向かって行きます。
独り立ちに向かっていく過程で、研修やOJTが必要になるでしょう。リソースを割かなければいけない部分が多いため、成果はマイナスからスタートがほとんどです。
一人前になるための育成の時期とも言えます。
独り立ち~退職の決断をするまで
能力を身に付けて独り立ちができたら、少しずつ能力が高まっていきます。ですが、能力は常に高まっていくのではなく、一定ラインに到達すると頭打ちになります。
頭打ちになった後はパフォーマンスが一定になり、大きくブレることなく成果を出せるようになるのが一般的です。この時期を長くすることが、多くの企業が抱えている課題でもあります。
例えばパフォーマンスを上げる場合、在籍期間を長くするのはもちろん、アウトプットを増やして成果を伸ばしましょう。
一方で、退職のように組織を離れる決断をすると、ELTVは下降気味になります。
退職の決断~退職まで
退職の決断から退職までの期間は、ELTVが大きく下がります。以下の2つが理由です。
- 仕事の引き継ぎ
- 有給消化
生産性が低下するのも自然な流れなのがわかります。グラフにすると徐々に下降していき、退職日に0になる形です。
ここまでがELTVの一連の流れとなります。
ELTV(従業員生涯価値) の計算式
ELTVは簡単な計算式で求められます。中でも重要な「採用コスト」を求める場合、以下の計算式を使いましょう。
ELTV=従業員の価値・成果×勤続年数
採用コスト=(人事の人件費+面接官の人件費+採用ツール使用料+エージェント手数料)÷応募者人数
採用コストの場合、採用ツールやエージェント手数料で変動する可能性が高くなります。エージェントを利用していない場合は手数料が不要なため、考えなくてOKです。
これらをもとに従業員の価値を見出す場合、以下の計算式を用いてください。
従業員の価値=オンボーディング完了後の従業員価値÷従業員価値の成長率×勤続年数-従業員価値の減少分-採用コスト
いずれもELTVを重視するのであれば必要となる計算式なので、覚えておくことをおすすめします。
ELTV(従業員生涯価値)が低いと採用効率が下がる
計算式を基に考えると、ELTVの低下は採用効率の低下に繋がることがわかります。採用効率を向上させるには、1人を採用するためにかかったコスト分の成果を早期に出せる状態になってもらわなければいけません。
もしELTVが低いとわかったなら、以下の原因を疑ってみましょう。
- 採用コスト分の成果が出ないまま退職になった
- 採用コストの成果が出るまで時間がかかってしまった
どちらも採用コストを回収できていない状態です。この状態になると、採用すればするほど企業にとってマイナスになります。早期の脱却が必要です。
ELTV(従業員生涯価値)を高めるための方法
ELTVを高める際、採用から退職までのタイミングで取れる施策が異なります。それぞれのタイミングに合わせて、以下の方法を検討してみましょう。
- 【採用】選考フローの最適化
- 【採用】Web面接の導入
- 【採用】リファラル採用
- 【採用】ダイレクトリクルーティングの導入
- 【独り立ちまで】オンボーディングの改善
- 【独り立ち以降】職場環境の改善
【採用】選考フローの最適化
採用活動において選考フローが複雑化している場合は、最適化しましょう。採用コストを削減するなら、真っ先に見直したい部分です。採用コストを見直せば、必然的にELTVが高まります。
削減する場合は、以下の方法がおすすめです。
- 最適な採用人数を見直す
- ChatGPTなどのAIを駆使する
- オンラインを駆使する
新卒採用は、一般的に1人あたり94万円ほどかかります。採用人数が増えれば、それだけコストが増大します。選考フローを見直し、最適化しましょう。
なお、新卒採用のコストについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
新卒採用にかかるコストを下げる方法とは?原因・対策・成功事例を紹介
【採用】Web面接の導入
コロナ禍によって多くの企業が取り入れ始めたWeb面接も導入すると良いでしょう。会場費や時間的コストを大きく削減できます。新卒学生にとっても移動費・宿泊費を削減できるため、お互いにメリットがあります。
特にZoomやSkypeなど、低コストで利用できるツールを駆使すると効果的です。
ただし、リアルに会って雰囲気を知りたいと考える学生も多くいます。どの程度Webに移行するかは慎重に検討してください。
【採用】リファラル採用
ELTVを高めるのなら、リファラル採用も意識したい採用方法です。社員が深く理解している人物を紹介してくれるため、自社に合った適性の人物だと期待できます。また、紹介されていることもあって簡単に辞めない傾向もあります。
勤続年数の長期化はもちろん、紹介なので採用コストの削減にも繋がります。
一方で、採用時・採用後・退職時とそれぞれ配慮しなければならない点が増えてしまうのがデメリットです。詳しくはリファラル記事について解説した以下の記事をご覧ください。
リファラル採用とは?メリット・デメリット、費用などを徹底解説
【採用】ダイレクトリクルーティングの導入
採用コストの削減をするなら、ダイレクトリクルーティングもおすすめの採用方法です。企業から人材を探し出す方法で、攻めの採用とも呼ばれています。
知名度に関係なく採用できることから、広告費といったコストがかからない点が強みです。エージェントも介さないため、仲介料もかかりません。
採用担当者の能力が問われますが、潜在層にもアピールできる採用方法です。
【独り立ちまで】オンボーディングの改善
採用後から独り立ちまでは、オンボーディングを改善しましょう。オンボーディングが充実するほど、以下のメリットがあるからです。
- 従業員がパフォーマンスを発揮し始めるまでの時間を短縮できる
- 従業員が会社やポストに長期滞在する可能性を高められる
オンボーディングが上手く機能していないと、どちらも採用後の課題となっている場合が多くあります。特にOJTを実施できていないと、ELTVに影響を与えかねません。
【独り立ち以降】職場環境の改善
独り立ち後は、職場環境がELTVに大きく影響を与える要素となります。労働環境を改善し、働きやすい職場にしましょう。モチベーションが高まり、勤続年数の長期化やパフォーマンスの増大に期待できます。
具体的には以下の項目の見直しを検討してみてください。
- 給与
- 労働時間
- 人事制度
- ポジションの設定
独り立ちした従業員の退職が多いのであれば、何かしらの問題が必ずあります。問題を分析し、改善していくことをおすすめします。
独り立ちから退職までの期間はELTVでも重要なポイントなので、従業員が働きたいと思う環境を作るよう意識しましょう。
ELTV(従業員生涯価値)で注意したいポイント
ELTVを意識する際、数値やグラフに意識を向けてしまいがちです。しかし、それよりも以下の点に注意しましょう。
- 優秀な人材=自社に必要な人材とは限らない
- 企業と個人が双方向の関係を作ることが大切
グラフ化すると、どうしても数値だけを見てしまいます。ですが、人には得手不得手があります。適切な配置をするのも人事の役目です。見極める力をつけて、正しく判断するよう心がけましょう。
ELTV(従業員生涯価値)についてより詳しく知りたい方はHR特別セッションへ
ELTV(従業員生涯価値)は、従業員の在籍期間と組織に対する貢献度を推定したものです。採用から退職までの期間で計測し、従業員の価値を割り出す考え方となります。
ELTVを高めるためには、採用から独り立ちまでの期間で様々な方法があります。採用コスト削減はもちろん、職場環境を改善し、働きたいと思える会社を作っていきましょう。
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