新卒採用は人材の獲得競争が激化しており、多くの企業が初任給を引き上げ始めています。一方で、人件費には限りがあるため「どこまで引き上げれば学生の志望度を上げられるのか」と判断に困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
初任給を設定する際は、他社の動向を調べて相場に合わせながら、基本給以外の福利厚生などとあわせて見直していくことが大切です。
本記事では、初任給と志望度の関係や、初任給を設定する際のポイントについて詳しく解説します。最新の調査結果もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
大卒・院卒の初任給の現状
厚労省が毎年発表している「賃金構造基本統計調査」によれば、令和4年の大卒・院卒の初任給は、大卒が228,500円、院卒が267,900円でした。こちらの金額は、残業代をはじめとする超過労働給与額は含まず、所得税等を控除する前の額です。
前年と比べると、大卒では+ 1.4%、院卒では+ 5.7%という結果になりました。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
引き上げが進む初任給
ここ数年、新卒の初任給は引き上げが進んでいます。産労総合研究所が、上場企業および同社の会員企業360社に調査したところ、「23卒の初任給を引き上げた」と答えた企業は68.1%にのぼりました。これは、1998年以降の調査で最も高い割合だそうです。
また、初任給を引き上げた理由を複数回答可能な形で尋ねたところ、「人材を確保するため」が70.2%で最多となりました。こちらも前回比7.0ポイント増となっており、多くの企業が人材確保に苦戦していることがうかがえます。
少子化や物価高が進んでいることを踏まえると、初任給の引き上げも当面続くことが予想されます。
学生への意識調査の結果
さて、初任給の現状が分かったところで、当事者である学生は初任給に対してどのような考えを持っているのでしょうか。ここからは、学生への意識調査の結果をもとに解説していきます。
- 初任給と志望度について
- 初任給の金額について
- 企業を選ぶポイントについて
初任給と志望度について
引用:約4割の学生が初任給「月収25~29万円」が適正だと感じている 前年比から約10ポイント増加—学情調べ|HRzine
上記は、就職情報サービスを手掛ける株式会社学情が、25卒予定の大学生・大学院生にアンケートを実施した結果です。「初任給が高い企業は志望度が上がりますか?」と尋ねたところ、「志望度が上がる」と「やや志望度が上がる」と答えた学生を合わせると9割近くになりました。
具体的な理由としては、「初任給が高い企業は、若手のうちからチャンスがあると思う」「初任給の高い企業のほうが、モチベーションが高く働けそう」などの声があがっています。
また、「初任給を引き上げる企業や、専門性や能力に応じて初任給を設定する企業は、志望度が上がりますか?」という質問でも、「志望度が上がる」「どちらかと言えば志望度が上がる」と答えた人が9割を超えました。
当然の結果とも言えますが、初任給の高さは志望度に大きく影響することが数字としてあらわれています。
初任給の金額について
引用:約4割の学生が初任給「月収25~29万円」が適正だと感じている 前年比から約10ポイント増加—学情調べ|HRzine
同じく学情の調査では「初任給はどの程度が適正だと思いますか?」という質問もしています。その結果「20〜24万円」と答えた人が最多の45.6%、次いで「25〜29万円」が38.1%という結果になりました。
引用:Job総研 「2023年 就活実態調査」を実施 | JobQ
続いて、こちらはJob総研が就活生約130名にインターネット調査をした結果です。こちらの調査では、理想の初任給額(中央値)が26万円、最低限希望する初任給額(中央値)が21万円となりました。
2つの調査結果を総合すると、学生の多くは20万円台半ば以上の初任給を希望しており、20万円台前半の場合は、初任給だけで魅力を感じてもらうことは難しいと言えそうです。
企業を選ぶポイントについて
引用:Job総研 「2023年 就活実態調査」を実施 | JobQ
Job総研の調査では「収入とやりがい、どちらを重視しますか」という質問も実施しました。その結果「やりがい」を選んだ人の割合は、合わせて56.7%という結果になりました。
ただ、「絶対に収入」や「絶対にやりがい」のように、どちらかに振り切っている人の割合は少ないのが特徴です。逆に言うと、多くの学生は収入とやりがいをどちらも重視しており、両立を望んでいるとも考えられます。
ちなみに、「やりがい」の中身を具体的に聞く設問では、「自身の成長を実感できること」「仕事で社会貢献を実感すること」「関わった人から感謝をされること」などが上位にランクインしています。
初任給を設定する際のポイント
ここからは、初任給を設定する際のポイントについて解説します。
- 相場を調べて、既存社員の賃金と調整する
- 賞与や各種手当とあわせて設定する
- 基本給だけでなく、福利厚生もアピールする
それぞれ詳しく見てみましょう。
相場を調べて、既存社員の賃金と調整する
新卒採用は、他社との人材獲得競争です。他社の初任給をリサーチして、相場に合わせないと学生を集められません。
ただし、新卒が集まらないからと言って、初任給が既存社員の給与よりも高くなるのは問題です。後から入ってきた新入社員の給与の方が高いとなると、確実に既存社員の不満を招きます。そのため、初任給を引き上げる場合は、既存社員の賃金テーブルも含めて全体で見直すことが必要です。
また、初任給だけが高くて将来的に昇給しにくかったり、下手をすれば減給したりするような給与モデルもおすすめできません。数年かけて育てた人材が、給与を理由に離職するサイクルに陥ってしまうためです。賃金テーブルを設計する際は、長期的な視点を忘れないようにしましょう。
賞与や各種手当とあわせて設定する
初任給を設定する際は、賞与や各種手当も考慮することが大切です。
例えば、残業代は別途支給なのか、固定(みなし)支給なのかによって、初任給の見栄えは大きく変わります。仮に月給が300,000円であっても、固定残業代が45時間含まれていると実質的な基本給は226,000円となり、22卒の平均とほぼ同じになるのです(※月所定172時間で計算)。
この他、賞与は年に何回で、1回あたり何ヶ月分支給されるのか、地域手当・資格手当はあるのかなどによっても、手取り額は大きく変わります。
最近話題になっている、初任給が高い企業の中には、こうした数字のトリックをうまく使っているだけで、実は基本給がそれほど高くないケースもあります。そのため、同業他社の相場を調べる際は、内訳までしっかりチェックすることが大切です。
基本給だけでなく、福利厚生でもアピールする
基本給だけでなく、福利厚生が手厚いことも学生へのアピールになります。
具体的には家賃補助や家族手当、社食・食事補助、資格取得の支援、休暇制度などが挙げられます。特に、給与水準が低い若手社員にとって、家賃補助は大きなメリットです。住む場所が確保できることで生活が安定し、仕事に集中できたり、人材が定着したりすることにもつながります。
最近の就活生は、企業選びの際に福利厚生やワークライフバランスを重視する傾向があります。自社への志望度を上げてもらい、優秀な人材を採用したい場合は、基本給とあわせて福利厚生も見直してみましょう。
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社会全体で少子化や賃上げが課題となっている中で、新卒社員の初任給の設定は、企業が生き残るための重要なポイントになります。初任給を設定する際は、目先の基本給だけにとらわれることなく、賞与や福利厚生、将来的な昇給モデルなども総合的に考えるようにしましょう。
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