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25卒からインターンシップの制度が変わり、要件を満たせば採用直結型で実施することが認められるようになりました。一方で、人事担当者からは「他社の動向は?」「具体的に何をやればいいの?」という声も聞かれます。
採用直結型インターンシップを実施するためには、メリット・デメリットを理解したうえで、学生のニーズに合ったプログラムを作成することが重要です。本記事では、採用直結型インターンシップのメリット・デメリットや、実施する際のポイントについて詳しく解説します。インターンシップの準備にお悩みの方は、ぜひチェックしてください。
インターンシップとは
インターンシップとは、学生が在学中に職場体験をするために、企業で実習や研修をする制度のことを言います。半日程度で終わるものから、数ヶ月かけて実施するものまで幅広いのが特徴です。以前は、これらを全てまとめて「インターンシップ」と呼んでいましたが、25卒を対象とするものから制度が見直され、正式名称が「キャリア形成支援活動」になりました。
インターンシップの4類型と特徴
新しくなった「キャリア形成支援活動」は、実施する目的や内容によって、4つのタイプに分類されています。主な特徴は以下の通りです。
タイプ1 | タイプ2 | タイプ3 | タイプ4 | |
名称 | オープン・カンパニー | キャリア教育 | 汎用的能力・専門活用型インターンシップ | 高度専門型インターンシップ |
目的 | 個社や業界に関する情報提供・PR | 働くことへの理解を深めるための教育 | 就業体験を通じて、学生にとっては自らの能力の見極め、企業にとっては学生の評価材料の取得 | 就業体験を通じて、学生にとっては実践力の向上、企業にとっては学生の評価材料の取得 |
就業体験 | なし | 任意 | 必須 | 必須 |
所要日数 | 単日 | プログラムによる | 汎用的能力活用型:5日以上専門活用型:2週間以上 | ジョブ型:2ヶ月以上修士課程学生向け:検討中 |
選考直結 | × | × | 〇 | 〇 |
4つのタイプのうち、採用直結型での実施が認められるのは「タイプ3」と「タイプ4」のみとなっています。
25卒から可能になった採用直結型インターンシップ
これまでのインターンシップは、あくまで職業体験が目的とされており、企業が参加学生を選考することは禁止されていました。しかし、禁止には拘束力が無いため、実態としてインターンシップを選考に組み込む企業が増えていました。
また、インターンシップという名のもとに、さまざまな目的・形態・期間のプログラムが存在し、学生の混乱を招いていたのも事実です。さらに一部の企業では、職業理解とは程遠い内容で、学生をアルバイトのように働かせるケースもありました。
こうした背景から、25卒からインターンシップのガイドラインが整備されることになったのです。新しいガイドラインでは、インターンシップを通した選考を全て禁止するのではなく、一定の要件を満たすことで可能とする内容になっています。
インターンシップに対する学生の意識
ここでは、インターンシップに対する学生の意識について解説します。
上記は、株式会社テックオーシャンが運営するオファー型サービス「TECH OFFER」に登録する理系学生に実施したアンケート結果です。24卒の学生に「夏季インターンシップに参加しましたか」と尋ねたところ、「はい」と答えた学生が83.6%に上りました。内訳を見ると、「半日」や「1日」など短期間のものに、複数参加している人が多いことが分かります。
また、同調査の「インターンシップを通して、どんな情報・経験を得たいですか」という質問では、次のような回答が得られました。
- 業界や企業について知る(38.0%)
- 現場(職場)の雰囲気について知る(33.7%)
- 職種や業務について学ぶ(19.0%)
- 就職活動で活かせる実績・経験を得る(4.9%)
- 就職後に活かせるスキルを身につける(4.2%)
さらに、こちらはキャリタス就活を運営する株式会社ディスコによるアンケート調査の結果です。
引用:キャリア意識やインターンシップ等に関する調査|株式会社ディスコ
インターンシップのタイプ別に参加意向を尋ねた結果、最も人気があるのは「タイプ1:オープン・カンパニー」で、「参加したい」と答えた人は合計で95.4%でした。また、採用直結型の「タイプ3ー②:専門活用型インターンシップ」に参加したいと答えた人は、全体では67.8%でしたが、理系院生に限って見ると74.3%に上りました。
採用直結型インターンシップを実施するメリット
採用直結型インターンシップを実施するメリットには、次のようなものがあります。
- 学生が企業を深く理解できる
- 企業が学生を適正に評価できる
- 早期に母集団を形成できる
- 採用コストを削減できる
それぞれ詳しく見てみましょう。
学生が企業を深く理解できる
インターンシップを実施すると、学生が企業や仕事内容を深く理解できるのがメリットです。実際に手を動かして仕事を体験することで、ネットで調べるだけでは分からないことがたくさん学べます。同じ業界であっても、企業によって事業戦略や文化は違うことが分かるはずです。
特に、オンラインではなく対面で実施する場合には、オフィスや働く人の空気感を肌で感じられるため、自分が働く姿もイメージしやすくなります。
企業が学生を適正に評価できる
インターンシップを通して選考することで、企業が学生を適正に評価できることもメリットです。応募書類や面接といった、限られた情報で学生の適性や意欲を見極めるのには、限界があります。最近は、学生側も綿密に選考対策をしてくるため、少ないコミュニケーションで本質を見抜くことが難しくなってきました。
その点インターンシップなら、実際の業務に携わりながらコミュニケーションがとれるため、その場しのぎのテクニックが通用しにくいのが特徴です。学生が本来持つコミュニケーション能力や問題解決能力などが見えやすくなります。
早期に母集団を形成できる
インターンシップを実施することで、早期に母集団を形成できます。早いうちから就活を意識してインターンシップに参加する学生には、自分のキャリアについて真剣に考え、計画的に行動できる優秀な人材が多い傾向です。
採用直結型のインターンシップを実施することで、早期にこのような活躍の可能性が高い人材と接点を持ち、自社をアピールできるのがメリットです。
採用コストを削減できる
インターンシップを通して選考すると、採用コストを削減できます。広報活動が解禁される3月までにしっかりと母集団が形成できていれば、求人広告や人材紹介にかけるコストが最小限で済むためです。しかも、インターンシップに参加した学生は企業理解も深まっているため、一から集客した場合と比べて、質の高い母集団が形成できます。
採用直結型インターンシップを実施するデメリット
採用直結型インターンシップの実施には、次のようなデメリットもあります。
- インターンシップの実施に工数がかかる
- 内容によっては学生の志望度を下げてしまう
- 細かい実施要件をクリアしなければならない
インターンシップの実施に工数がかかる
インターンシップの実施には工数がかかります。実施期間中はもちろんのこと、プログラムの策定や広報活動、場合によってはインターンシップのための選考が必要になることもあります。特に、プログラムの策定については「何をすれば良いのか」「現場社員にどこまで協力してもらえるか」などが悩みどころです。これについては、次の章で詳しく解説しますので参考にしてください。
内容によっては学生の志望度を下げてしまう
インターンシップは、実施する内容によっては学生の志望度を下げてしまうことがあります。例えば、自社の自慢ばかりで学生の身にならない講義、他社のマネをしただけのワークショップ、単調で雑務のような業務体験、などです。
また、インターンシップで仕事内容をどこまでリアルに伝えるかも難しいところです。綺麗ごとばかりを伝えるとミスマッチを起こす可能性がありますが、ネガティブな面を見せ過ぎると志望度が下がってしまいます。
細かい実施要件をクリアしなければならない
採用直結型インターンシップを実施するためには、細かい実施要件をクリアしなければならないことも、デメリットです。具体的には、次のようなものがあります。
- 就業体験要件
実施期間の半分を超える日数を就業体験に充てる(テレワークも可) - 指導要件
職場の社員が学生を指導し、フィードバックを行う - 実施期間要件
汎用的能力活用型では5日間以上、専門能力活用型では2週間以上 - 実施時期要件
学業との両立に配慮するため、学部3・4年ないし修士1・2年の長期休暇期間に実施する - 情報開示要件
募集要項で、プログラムの趣旨や内容、求める能力など9項目を公表する
参考:タイプ3産学協議会基準に準拠したインターンシップの要件
公平を期すためにも、きちんと要件を確認しておきましょう。
採用直結型インターンシップを実施する際のポイント
採用直結型インターンシップを実施する際のポイントは、次の3つです。
- ターゲットと目的を明確にする
- 内容は4つの軸で考える
- 現場の社員にも協力してもらう
以下で詳しく解説します。
ターゲットと目的を明確にする
インターンシップを実施する際は、ターゲットと目的を明確にすることが大切です。例えば、院生と学部生どちらを対象とするのか、自社に興味をもってもらうだけで良いのか、それとも専門的な技術を深く理解してもらうのか、などがあります。
ターゲットや目的を明確にすることで、自社のビジョンや技術力、社風など、何をアピールすれば良いのかも見えてきます。
内容は4つの軸で考える
インターンシップの内容は「形式」「プログラム」「期間」「時期」の4つの軸で考えるのがポイントです。
「形式」の代表的なものとして、グループワークやプレゼンテーション、座談会、営業同行などが挙げられます。また、「プログラム」には業界理解、企業理解、仕事理解などがあります。
これらを踏まえて、それぞれの項目を「グループワーク」×「仕事理解」×「5日間」×「3年生の夏季」のように設定していくと、内容を決めやすくなります。
現場の社員にも協力してもらう
インターンシップでは、現場の社員に協力してもらうことも欠かせません。学生は、会社の雰囲気や社員の様子を知りたいと思ってインターンシップに参加しています。そのため、現場の社員がどのように対応するかで、その後の志望度も変わってきます。
業務が忙しい中での受け入れは負担もあると思いますが、インターンシップが企業にとっていかに重要なイベントかを共有し、協力してもらうことが大切です。現場社員と打ち合わせをする際に、各種ハラスメント研修も実施できるのが理想です。
理系学生の採用なら『TECH OFFER』
インターンシップは、25卒から採用直結型での実施が可能になったことで、重要性がますます高まっています。企業と学生の双方にとって有意義なインターンシップにするためには、ターゲットや目的を明確にしたうえでプログラムを策定し、現場の社員にも協力してもらうことが大切です。
こちらの資料では、ダイレクトリクルーティングの『TECH OFFER』が、理系学生のインターンシップについて調査した結果をまとめています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
25卒理系アンケートレポート!学生と企業目線からみる「インターンシップ」編