デジタル化やAI(人工知能)、脱炭素などの技術が注目されるなか、理系学生を採用したいと考える企業が増えています。しかし、ただでさえ人材不足が深刻ないま、自社の事業分野に精通した理系学生を採用するのは至難の業です。
厳しい状況下で優秀な理系学生を採用するためには、適切な採用戦略を立てることが欠かせません。本記事では、理系学生を取り巻く環境や学生の特徴、採用のポイントを解説します。政府統計や民間調査などさまざまなデータもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
理系学生を取り巻く環境
理系学生の特徴を見る前に、まずは彼らを取り巻く環境について見てみましょう。理系学生は実際どれぐらいいるのか、いつ頃就活をしているのかなど、さまざまな調査結果をもとに解説します。
理系学生は不足している
文部科学省の学校基本調査(令和3年度)によると、全国の大学生は約262万6千人で、そのうち自然科学分野(いわゆる理系)の学部に在籍している学生は約88万2千人だそうです。これは、大学生の約33.5%が理系学生という計算になります。
一方、海外の状況を見てみると、理系学部出身者の比率はイギリスが45%、ドイツが42%、アメリカが38%などとなっています。デジタル化やAI、脱炭素など理系技術への需要が高まるなかで、世界的に見ても日本の理系学生は少ないのが現状です。
政府は理系人材の育成を強化するため、大学の支援に数千億円規模の基金を設立するなどの取り組みを始めています。しかし、実際に効果があらわれるのはまだまだ先になりそうです。
理系学生の就活時期
上記のグラフは、理系学生(23卒)の内定状況を、学科系統別に調査した結果です。これによると、どの学科系統でも4月1日から5月1日にかけて、内定率が大幅に伸びていることが分かります。また、情報工学系の学生については、2月1日時点の調査ですでに21.6%の学生が内定を獲得しており、他の学科系統に比べて内定が早い時期に出ているようです。
同調査では大学院生についても学科系統別の内定率を調べています。大学院生については、全体的に学部生よりも就職内定率が高く、4月1日時点で63.8%、6月1日時点では93.8%が内定を獲得していました。これらはあくまで学生が内定を獲得した時期なので、説明会やエントリーは数ヶ月前から始まっていると考えられ、就活の早期がうかがえます。
理系学生の就活の特徴については、こちらの記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
新卒の理系採用を成功させる!理系学生の特徴と採用方法を紹介
理系学生の特徴
ここからは、理系学生が求められる理由とも言える、特徴や強みについて解説します。理系学生には、次のような素養を持つ人材が多いと言われています。
- 数字に強い
- ロジカルシンキングが得意
- 忍耐力がある
それぞれ詳しく見てみましょう。
数字に強い
理系学生は、数字に強いのが特徴です。理系学部には化学系、物理系、生物系などさまざまな分野がありますが、どの分野でも数学の知識やデータ収集・分析が欠かせません。したがって、理系学生は大学生活を通して、数字を処理する訓練を積んでいると言えます。
企業活動においても、数字を処理する能力は売上管理やマーケティング、経営企画など、さまざまな場面で必要です。そのため、たとえ理系の研究職ではない職種に就いたとしても、数字に強いことは武器になります。
ロジカルシンキングが得意
理系学生は多くの論文に触れたり研究をしたりする中で、ロジカルシンキングの癖がついています。また、研究を通して「問題提起・仮説・検証・改善」というサイクルを実際に体験してきた学生も多いです。
そのため、社会に出てから困難な状況に直面した場合も、自分で問題点を整理し、最適な解決法を見出す力が備わっていると言えます。また、多くの情報を整理して、エビデンス(根拠)とともに他人に分かりやすく伝えられるのも、理系学生の強みです。
忍耐力がある
一般的に、理系学生は大学4年生ごろから研究室に所属し、研究テーマを決めて個人やグループで研究に取り組みます。また、ゼミなどで教授の研究を手伝うこともあります。
これらの研究では、多くの場合特殊な設備や機材を使うため、どうしても長時間研究室にこもることになりがちです。理系学生の間では「もう3日も家に帰っていない」や「年越しは研究室だった」といったエピソードを持つ人も珍しくありません。
こうした経験から、理系学生にはコツコツと地道な作業を続けることに耐性のある人材が多いと言えます。また、失敗したりすぐに結果がでなかったりしても、諦めない忍耐力が養われているのも強みです。
理系学生を採用するポイント
魅力的な人材が多い理系学生ですが、彼らを採用するためには大きく3つのポイントがあります。
- 選考スケジュールは柔軟に対応する
- 学生の研究内容をプレゼンしてもらう
- 大学や研究室とつながる
以下で詳しく解説します。
選考スケジュールは柔軟に対応する
理系学生を採用するためには、選考スケジュールを柔軟に組むことが大切です。「理系学生の就活時期」でも解説した通り、多くの理系学生は4月頃に内定を獲得しています。4年生になると研究が忙しくなることを考慮し、早めに進路を決定する学生も多いです。優秀な人材を確保するためには、大学3年生のうちに接点を持つことが必要と言えます。
また、理系学生は研究で多忙な日々を送っています。研究発表や学会の手伝いなどで、1週間単位で予定が埋まってしまうことも珍しくありません。そのため、企業側が「説明会はこの期間だけ」「面接はこの日時だけ」と限定してしまうと、本当は参加したいのにスケジュールの都合で参加できない学生が出てきます。
優秀な学生を取りこぼさないためにも、選考スケジュールは杓子定規に決めてしまうのではなく、個々の事情をふまえて融通することが大切です。
学生の研究内容をプレゼンしてもらう
理系学生を採用するために、選考で研究内容をプレゼンしてもらうのも有効な手段です。たとえ研究が自社とは関連のない分野であっても、なぜそのテーマを選んだのか、研究で何に苦労したのか、どのように克服したのかなどを聞くことで、学生の考え方や人柄を知る手掛かりになります。
また、研究に関する話を聞くことは、学生にとってもプラスの効果があります。以下のグラフは、就活を終えた大学生に対して就活への満足度を調査した結果です。
この調査によれば、「大学で学んだ専門性が、就職活動で評価されたと感じる」人ほど「自身の就職活動の取り組みに満足している」人が多いことが分かります。つまり、大学時代の取り組みが評価されると、就活の満足度が高いということです。
理系学生は自分が頑張ってきた研究に愛着があるため、研究の成果を評価してほしい、できれば専門性を活かして働きたいと考えています。そのため、選考の場で研究を評価してもらえると「自分のことを認めてくれる良い企業だ」と感じます。
特に専門分野が異なる企業に採用された場合、学生は「せっかく勉強したことが活かせない」「自分以外の誰でも良かったのではないか」と悩むことが多いです。そうしたときに「あなたの研究に対する姿勢を評価した」や「こういうスキルを当社でも活かしてほしい」と具体的に伝えておくことで、内定辞退などを防ぐ効果があります。
大学や研究室とつながる
理系学生を採用するためには、大学や研究室と繋がることも有効です。一番シンプルな方法としては、既存社員に出身大学や研究室の後輩を紹介してもらうというものがあります。採用実績のある研究室なら学生のレベルがある程度分かりますし、学生にとっても「先輩が就職した企業」ということで親近感を持ちやすいのがメリットです。
また、研究室とのつながりは貴重な採用ルートとなるため、一度構築できたら継続していくことも大切です。社員個人にOB・OGとして関わってもらうだけでは、異動や退職などにより関係性が途切れてしまうこともあります。そのため、毎年インターンシップを受け入れるなどして、組織としての関係性を深めておくのがおすすめです。
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技術の進歩とともに理系学生を採用したいと考える企業は増えています。また、理系学生は数字に強く、ロジカルシンキングにも長けているという特徴があるため、研究職以外の職種でも求められているのが現状です。このような状況で人材の獲得競争に勝つためには、研究内容を評価することや、研究室とつながることなどがポイントになります。
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