新卒採用では、良いと思った学生に選考を辞退されてしまったり、狙った層とは異なる学生から応募が集まってしまったりすることがあります。応募総数だけを見れば十分なのに、採用に結びつかないのは「歩留まり」が原因かもしれません。
歩留まりとは、次の選考に進んだ人数の割合を表します。歩留まりが低いのにはいくつか原因があるため、ポイントをおさえて対策すれば改善が可能です。
本記事では歩留まりの平均や、歩留まり率を改善するコツについて詳しく解説します。今すぐできる施策なので、ぜひ自社の採用活動に取り入れてみてください。
歩留まりとは
歩留まり(ぶどまり)とはもともと、工場など生産の現場で、原料の投入量に対する製品の出来高の割合を意味する言葉です。このことから、採用活動においては「次の選考に進んだ人の割合」という意味で使われています。
具体的には、会社説明会からエントリーに進んだ人の割合や、一次選考から二次面接に進んだ人の割合などがあります。また、歩留まりは「エントリー数に対する内定者数」のように、連続していない選考段階についても算出が可能です。
歩留まり率の計算方法と計算例は、以下の通りです。
歩留まり率(%)=選考通過者 ÷ 選考参加者 × 100
例:一次面接で100名から30名に絞られた場合
面接通過率(%)=一次面接通過者 30名 ÷ 一次面接参加者100名 × 100 = 30%
このように、選考段階ごとに受験率や面接通過率、中途辞退率、内定辞退率などを算出することで、どの段階に課題があるのかが明確になります。
新卒採用における歩留まりの平均
ここでは、新卒採用における歩留まりの平均について解説します。以下の表は、2020卒採用を行った企業に関して調査した結果です。「採用予定数を100」とした場合の「内定出し人数」「内定辞退人数」「内定数」をもとに、歩留まり率を算出しました。
従業員規模 | 内定出し人数 | 内定辞退人数 | 内定数 | 歩留まり率 |
300人未満 | 149.3 | 65.7 | 82.0 | 54.9% |
300~999人 | 165.0 | 76.4 | 87.2 | 52.8% |
1,000~4,999人 | 173.9 | 79.5 | 91.3 | 52.5% |
5,000人以上 | 203.4 | 111.9 | 88.7 | 43.6% |
この結果を見ると、従業員規模5,000人未満の企業はいずれも歩留まり率が50%台前半となっています。また、従業員規模5,000人以上の企業においては43.6%という低さです。これらの数字は、内定を出してもほぼ半数しか内定承諾に至らないということを意味します。
歩留まり率が低い原因
歩留まり率が低い場合に考えられる原因として、次のようなものがあります。
- 自社の魅力が伝わらなかった
- 求人広告と実態が違った
- 信頼関係を築けなかった
- 他社を優先された
それぞれ、詳しくみてみましょう。
自社の魅力が伝わらなかった
自社の魅力が学生に十分伝わっていないと、選考過程の序盤で歩留まり率が低くなる原因になります。せっかく自社に興味を持って説明会に来てくれた学生も、説明会の内容が難しすぎたり、退屈だったりするとエントリーせずに離脱してしまうのです。
プレエントリーや説明会の段階では「とりあえず情報を集めよう」と気軽に参加する学生も多いため、これらの数だけで採用人数の見通しを立てるのは難しいと言えます。
求人広告と実態が違った
学生が「求人広告と実態が違う」と感じることも、歩留まり率が低下する原因の1つです。例えば、募集要項には「転勤なし」と書かれているのに、面接で「転勤に対応できますか?」などと質問されるケースはよくあります。
このような矛盾があると、学生は「本当は転勤があるのだろうか。もしかしたら他の項目も嘘が書かれているのではないか。」と不信感を持ってしまうものです。実際には募集要項の通りに運用されている場合でも、面接官との情報共有がうまくできていなかったり、ちょっとした言い回しで誤解を招いてしまったりすることもあります。
信頼関係が築けなかった
選考の過程で採用担当者との信頼関係が十分に築けなかった場合も、歩留まり率は低下します。特に、電話やメールのレスポンスの早さは重要です。質問してもなかなか返事がもらえなかったり、連絡漏れがあったりすると信用を失います。
また、新卒採用を複数の担当者で行っている場合は、チーム内での連携不足も失敗の一因になります。重要な情報が共有されておらず、担当者によって言うことが違っていたり、学生に関する情報を把握していなかったりすると、いい加減な企業だと思われてしまいます。
他社を優先された
他社を優先されてしまった場合も、歩留まり率は下がります。近年の内定獲得数は平均で2.5社ほどとなっており、内定を出した学生が自社1本に賭けている可能性は低いです。
そのため、最終的に内定を承諾する企業を選ぶ段階で、他社の方により魅力を感じていた場合は、そちらを優先されてしまうことがあります。
歩留まり率を改善する3つのコツ
ここからは、歩留まり率を改善する3つのコツをご紹介します。上記で解説した歩留まり率が低い原因を、1つずつ潰していくのが基本です。
学生目線で魅力を打ち出す
選考辞退や内定辞退を防ぐためには、学生目線で魅力を打ち出して、志望度を高めることが大切です。ここでは「学生目線で」という点がポイントになります。
どの企業でも、自社の魅力は色々と打ち出しているはずですが、「企業が推したいこと」が「学生が知りたいこと」と一致するとは限りません。見当違いなアピールをしても、学生の志望度は上がらないのです。
最近の学生が注目するワードとしては、残業なし(少なめ)や有給消化率、フレックスタイム制、リモートワークの導入などがあります。これらに取り組んでいる企業は、ぜひ前面に打ち出していきましょう。
求人広告はみんなでチェックする
歩留まり率を改善する施策として、求人広告を採用担当以外の人にもチェックしてもらうことも有効です。求人原稿を入稿する前に、配属現場にいる社員や、若手社員などにも見てもらうと、思わぬ意見をもらえることがあります。
例えば「このスキルはそれほど求めていない」「こういう点は魅力になるのではないか」といった意見です。採用担当者の思い込みだけで求人広告を作ると、現場でのミスマッチの原因にもなるため、なるべくみんなでチェックするようにしましょう。
また、採用イベントに登壇する人や面接官などは、あらかじめ掲載内容に目を通しておくことも大切です。これにより、学生に間違ったことや誤解されるようなことを話して、信用を失うことを避けられます。
連絡は早く・確実にする
歩留まり率を上げるためには、学生との連絡を早く・確実にすることも大切です。メールの返信などは、原則1営業日以内に対応しましょう。確認や調整が必要ですぐに答えられない場合にも、メールを放置するのではなく「確認に(どれぐらい)時間がかかる」という一報だけは入れるべきです。
また、学生との連絡履歴を採用チーム内で共有することも大切です。例えば「〇〇さんは実習中だから、日中は電話連絡がつきにくい」などの申し出を受けているのに、他の担当者が何度も着信を残したりすると、印象が悪くなります。
このようなことを避けるために、採用管理ツールなどを活用して、連絡履歴はいつでもメンバーが確認できるようにしておきましょう。
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歩留まり率は、次の選考に進んだ人の割合を表す数字です。多くのエントリーがあっても、選考辞退や内定辞退が頻発してしまうと、計画通りの人数を採用できなくなってしまいます。このような失敗を避けるためには、自社の魅力を効果的に打ち出し、信頼関係を築くことが大切です。
また、歩留まり率の向上には、ダイレクトリクルーティングを活用することも有効です。自社の求める人材に直接アプローチできるため、採用活動を効率的に行えます。
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