新卒社員の早期離職率が3割を超えるいま、人材の流出を防ぐために「社内エンゲージメント」という言葉が注目を集めています。
一方で、新卒社員のエンゲージメントはどれくらいが普通なのか、どうすれば高められるのかが分からないという方も多いのではないでしょうか。新卒社員のエンゲージメントを高めるためには、現状を把握し、組織全体で改善に取り組むことが大切です。
本記事では、社内エンゲージメントの実態や高める方法について詳しく解説します。新卒社員の早期離職やモチベーション管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
社内エンゲージメントとは
そもそもエンゲージメント(engagement)とは、約束や契約、結婚などを意味する英単語です。人事の分野において「社内エンゲージメント」は、従業員の企業に対する「愛着」や「愛社精神」という意味で使われ、「従業員エンゲージメント」と呼ばれることもあります。
エンゲージメントが注目される理由
近年、エンゲージメントが注目される理由は大きく2つあります。
1つめの理由は、終身雇用制度が崩壊して人材が流出しやすくなった中で、優秀な人材をつなぎとめる必要が高まっているからです。給与のように目に見える条件だけでなく、「愛着」によって転職を防ごうというわけです。
2つめの理由は、2023年3月から上場企業を対象に「人的資本の情報開示」が義務化されたためです。人的資本とは、人も大切な経営資源とする考え方のことを言います。人材の価値は経営に大きく影響するため、上場企業は「エンゲージメント」や「育成」「健康」など7つの分野に関する情報を、ステークホルダーに周知すべきとされました。
こうした背景があり、いまエンゲージメントへの注目が高まっています。
「従業員満足度」や「ロイヤリティ」との違い
エンゲージメントと似た指標として「従業員満足度」や「ロイヤリティ」というものがあります。
従業員満足度は、給与や休暇などの労働条件についてどれくらい満足しているかを表す指標です。そのため、給料が高くて満足している社員が、必ずしも会社のことを好きとは限らないということになります。
また、ロイヤリティは日本語にすると「忠実」「忠誠」「愛着」などと表されます。エンゲージメントは企業と従業員が対等な関係性なのに対し、ロイヤリティは主従関係で企業が強い立場と考えるのが特徴です。
新卒社員のエンゲージメントの実態
引用:【wevox】新入社員のエンゲージメント低下パターンを分析 | 株式会社アトラエのプレスリリース (prtimes.jp)
それでは、実際に新卒社員のエンゲージメントはどのように推移するのでしょうか。上記は、アトラエ社が18卒の新卒社員を対象に、エンゲージメントスコアの変化を調査した結果です。
グラフ全体を見ると、エンゲージメントスコアは入社から1年かけて徐々に低下していくことが読み取れます。唯一4月から5月にかけては上昇していますが、これは最初の1ヶ月で環境に慣れたことや、人間関係が構築できたことが要因だと考えられます。
しかし、6月以降エンゲージメントスコアはほぼ下落の一途で、入社から1年後には10ポイント以上も低下しています。この調査により、新卒社員のエンゲージメントは入社1ヶ月程度がピークという衝撃的な事実が明らかになりました。
エンゲージメントを高めるメリット
エンゲージメントが高まると、企業にとって次のようなメリットがあります。
- 離職率が低下する
- 生産性が向上する
- 業績が向上する
それぞれ詳しく見てみましょう。
離職率が低下する
エンゲージメントが高まると、離職率が低下します。仮に何らかの苦境があったとしても、「自分たちの組織のために、力を合わせて乗り越えよう」という気運が生まれ、目先の損得のために離職する人は減ると考えられます。
生産性が向上する
エンゲージメントが高い企業では、生産性も向上します。従業員は指示されたことだけを嫌々やるのではなく、自分で考えて必要な行動を取れるようになるためです。また、離職を防いだ結果として、従業員一人ひとりの業務の習熟度が上がることも、生産性の向上につながります。
業績が向上する
エンゲージメントが高い企業では業績も向上します。
リンクアンドモチベーション社と慶応義塾大学岩本研究室との共同研究によれば、「エンゲージメントスコア」と「営業利益率」には正の相関関係があることが明らかとなっています。つまり、エンゲージメントが高いほど、企業の業績も良くなるということです。
参考:「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開|株式会社リンクアンドモチベーション
エンゲージメントを高める方法
エンゲージメントを高める具体的な方法には、次のようなものがあります。
- 従業員の現状や価値観を把握する
- 企業の理念やビジョンを共有する
- 働きやすい環境を整える
- マネジメント層を教育する
- 成果を評価し、フィードバックする
- 社内コミュニっケーションを活性化する
以下で詳しく解説します。
従業員の現状や価値観を把握する
エンゲージメントの向上に取り組む前に、まずは現状を把握することが必要です。アンケート調査を実施して、従業員がいま感じていることや、求めていることを明らかにしましょう。具体的な質問例には、次のようなものがあります。
- 仕事に誇りを感じているか
- 職場の誰かが自分のことを気にかけてくれていると思うか
- 直近1週間で、職場で褒められたり感謝されたりしたか
- 仕事で重視することは何か
企業の理念やビジョンを共有する
エンゲージメントを高めるためには、企業の理念やビジョンを共有することも大切です。ただし、単に経営理念を暗記すれば良いというわけではなく、従業員が本当の意味で内容を理解し、日常の行動に落とし込めるようにしなければなりません。
理念の浸透と言えば、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが有名です。オリエンタルランドでは全ての行動をマニュアル化するのではなく、重要な理念だけを確実に浸透させることで、キャストがそれぞれ自分で考えて行動に移しています。東日本大震災の際には、ゲストの安全確保のために機転を利かせた対応で話題となりました。
このように企業理念やビジョンを共有することで、従業員も自分の役割が認識でき、エンゲージメントが高まりやすくなります。
働きやすい環境を整える
働きやすい環境を整えることも、エンゲージメントを高める方法の1つです。具体的には、パソコンをはじめ仕事に必要な道具を充実させる、人事評価や給与体系は納得感のある制度にする、などが挙げられます。
物理的な面だけでなく感情的な面も含めて、「自分は会社から大切にされている」と感じられることが、「自分も会社を大切にし、貢献したい」という気持ちにつながります。
マネジメント層を教育する
エンゲージメントを高めるためには、マネジメント層の教育も欠かせません。日常業務の中で、従業員の状況を理解したりモチベーションをコントロールしたりするのは、マネジメント層の仕事です。また、経営層の方針や思いを現場に伝えるうえでも、マネジメント層の役割は重要です。
マネジメント層の個人の力量に頼るのではなく、組織としてコーチングやメンタリングに関する研修を実施して、正しい教育法を身に付けてもらうことが大切です。
成果を評価し、フィードバックする
従業員の成果を正しく評価し、フィードバックすることもエンゲージメント向上につながります。「自分の努力が認められた」「会社から必要とされている」と感じることで心理的安全性や意欲が高まります。
ただし、評価の基準が上司の気分や好みで変わるようではいけません。公平な評価基準をあらかじめ周知しておき、それに基づいて評価やフィードバックを行うことが大切です。
社内コミュニケーションを活性化する
仕事に関する悩みの多くは人間関係に起因するものです。そのため、社内のコミュニケーションを活性化することで職場の居心地が良くなり、社内エンゲージメントの向上が期待できます。
特に忙しい現場では、日常的に雑談する余裕もなく、殺伐とした雰囲気になりがちです。ちょっとした行き違いでも「無視されている」「わざと〇〇された」と感じてしまい、仕事に行くのが嫌になってしまうこともあります。
社内イベントを企画したり、コミュニケーションツールを導入したりして、コミュニケーションが発生する仕組みを用意してあげることが有効です。
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新卒社員の早期離職を防ぐためには、社内エンゲージメントを高めることが大切です。アトラエ社の調査では、新卒社員のエンゲージメントスコアが最初の1年で10ポイント以上も低下することが分かっており、1年目でいかにきめ細かいフォローをするかが離職防止のカギとなります。
エンゲージメントを高めるために、企業の理念やビジョンを繰り返し共有したり、成果を公平に評価してフィードバックしたりして、できることから対策していきましょう。
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