2022年4月に女性活躍推進法が改正され、女性の社会進出は国をあげて取り組むべき課題となっています。これまでは男性中心だった企業が、積極的に女性を採用するケースも増えてきました。一方で「女性は結婚や出産ですぐに辞めてしまうのではないか」「どうすれば女性が来てくれるのか分からない」という声も聞かれます。
女性採用を推進するためには、柔軟な働き方を実現し、ターゲットに合わせたアピールをすることが大切です。これにより女性採用が進めば、生産性が向上したり、企業イメージがアップしたりというさまざまなメリットが期待できます。
本記事では、女性採用のメリットや採用を成功させるポイントについて詳しく解説します。新卒採用で女性を増やしたいとお考えの方も、ぜひ参考にしてください。
女性採用が注目される背景
近年、女性採用があらためて注目されているのには、次のような背景があります。
- 女性の就業率
- 女性のキャリアプランの変化
- 女性活躍推進法の改正
詳しく見ていきましょう。
女性の就業率
上記は総務省が女性の就業率の推移について調査した結果です。2022年では25〜44歳女性の79.8%が職に就いていることが分かります。2005年の64.0%に比べると、15ポイント以上の増加です。男女の差についても、2005年には22.3ポイントもありましたが、今では11.8ポイントまで縮まりました。
女性のキャリアプランの変化
女性のキャリアプランが変化してきたことも、女性採用が注目される理由の1つです。以前は、結婚や出産を機に退職して専業主婦になる女性が多く見られました。しかし最近は、結婚や出産をしても働き続けて、キャリアを築きたいと考える女性が増えています。
上記は、第1子出産前後の就業継続率を調査した結果です。直近(2015〜2019年)では、出産前に働いていた人のうち、出産後も就業を継続する人が約7割、退職する人が約3割となっています。この30年間で、出産を機に仕事を続ける人と辞める人の割合が逆転したことが分かります。
女性活躍推進法の改正
女性活躍推進法とは、女性が活躍しやすい職場環境を作ることを目的として2016年に施行された法律です。具体的には、次のようなことが定められています。
- 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
- 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
- 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
またこの法律では、事業主に対して女性採用比率や勤続年数男女比、労働時間の状況、女性管理職比など、さまざまな情報を把握し、改善、公表することも義務付けています。
2016年施行時には、対象企業が労働者301人以上の企業のみ(それ以下は努力義務)でしたが、2022年の改正で101人以上の企業にまで拡大されました。
企業が女性採用を推進する6つのメリット
企業が女性採用を推進すると、次の6つのメリットがあります。
- 採用ターゲットが倍になる
- 多様性が生まれる
- 生産性が向上する
- 企業のイメージアップになる
- 女性消費者の意見を取り入れられる
- 公的機関からの優遇が受けられる
採用ターゲットが倍になる
近年、少子高齢化により労働力不足が深刻化しており、企業の存続に関わる事例も出てきています。そんな中、特に合理的な理由もなく、慣例で採用ターゲットを男性にしてしまっている企業も多いのが実情です。例えば「営業職は男性、事務職は女性」といった具合です。
しかし、営業職で活躍する女性はたくさんいますし、ほとんどの場合、男性でなければいけない理由はありません。女性を採用ターゲットに含めることで、候補者が2倍になるのがメリットです。
多様性が生まれる
女性は男性に比べて、出産や育児などのライフイベントがキャリアに大きく影響します。産休・育休や時短勤務、フレックス勤務、テレワークなどの制度を整えることは、優秀な人材に定着してもらうために重要です。
また、男性や子どものいない人も、本人が病気になって休業することがあるかもしれません。家族の介護のために、時短勤務や引っ越しが必要になる可能性もあります。フレックス勤務やテレワークが進んでいると、多様な人材が活躍できることにもつながります。
生産性が向上する
家事育児を経験した女性は、マルチタスクが得意だと言われています。限られた時間の中で、どの順番で仕事を片づけるか、どうすれば効率よく回るかを考える癖がついているためです。
実際に、日興リサーチセンターの調査では「女性役員が2名以上いる企業では、女性役員がいない企業に比べて経常ROE(自己資本利益率)が高く、有利子負債比率は低い」ということが明らかになっています。
参考:女性役員の登用と企業パフォーマンスの実証研究に関するDiscussion material|日興リサーチセンター
企業のイメージアップになる
女性の活躍推進は、国をあげてのプロジェクトとなっており、世間の人々の認知も高まっています。そのため、「女性が働きやすい企業=良い企業」と連想されやすく、企業のイメージアップになるのがメリットです。
女性消費者の意見を取り入れられる
女性採用を進めると、女性消費者の意見を取り入れられることもメリットです。
ある調査では、家庭で使用する商品やサービスについて、購買の意思決定権は女性が8割も握っていることが明らかになっています。商品やサービスの企画・開発において、女性の意見は見過ごせないものだと言えます。
参考:家庭内で購買意思決定権をもつのは女性が8割|ECのミカタ
公的機関からの優遇が受けられる
女性採用を推進すると、公的機関からの優遇が受けられることもメリットです。
行政では、女性が能力を発揮しやすい職場環境の企業に「えるぼし認定」、子育てをサポートしている企業に「くるみん認定」などの制度を設けています。また、経産省と東京証券取引所は、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」に認定し、投資家に魅力ある企業としてPRもしています。
こうした認定を受けることで、助成金が受けられたり、資金を調達しやすくなったりします。
女性採用で懸念されることと対処法
ここでは、女性採用を進めるうえで懸念されることと、対処法について解説します。
- 出産や育児による離職
- 管理職を目指す人が少ない
出産や育児による離職
近年、結婚を機に退職する女性は減ってきましたが、まだまだ出産や育児、介護を理由に退職する人もいるのが現状です。ただ、退職を選ぶ女性の中には「できることなら仕事を続けたかったが、勤務時間や休日、通勤などの都合で仕方なく辞める」という人もいます。
このような人に対しては、例えば「時短勤務を3歳までではなく小学校卒業までにする」「フルリモート勤務も可能にする」など、柔軟な働き方を整えることで、離職を防げる場合もあります。
管理職を目指す人が少ない
採用市場では「女性を採用したいと思っても、管理職を目指してくれる人が少ない」という声も聞かれます。この場合は、なぜ女性が管理職を目指さないのか、原因を分析して、改善していくことが必要です。
例えば、「前例がないから自分にはできない」と感じているのであれば、セミナーや他社の事例で学び、女性が管理職として活躍する姿をイメージしやすくすることが有効です。また、「家事育児との両立ができない」という理由なら、長時間労働に頼らない働き方を、具体的に示していくのも良いでしょう。
女性採用を成功させるポイント
女性採用を成功させるポイントは以下の通りです。
- 産休・育休だけでなく復帰後のサポート体制を整える
- 女性採用の推進を社内で共有する
- 採用マーケティングを徹底する
産休・育休だけでなく復帰後のサポート体制を整える
女性採用を成功させるためには、産休・育休だけでなく復帰後のサポート体制を整えることも大切です。例えば、育児・介護休業法では「3歳に満たない子を養育する者」が時短勤務の対象となっていますが、現実問題として4歳から1人で留守番ができるかと言えば、それは無理な話です。
法律が定める制度はあくまで最低ラインなので、実際に育児をする社員たちの声を聞きながら制度を充実させ、運用実績も作っていくことが大切です。
女性採用の推進を社内で共有する
女性採用の推進は人事だけで取り組むのではなく、社内全体を巻き込んでいくことも大切です。経営層や現場社員も含めて、女性採用の目的やメリットを周知していきましょう。
また、男性中心の組織に女性を採用する場合は、同時に複数名採用することも有効です。同期のような存在がいることで、男性社会で孤立してしまったり、女性ならではの困りごとを相談できなかったりするのを防げます。
採用マーケティングを徹底する
女性採用を成功させるためには、採用マーケティングの徹底も必要です。
はじめに、どのような女性を採用したいのかを明確にしましょう。そして、ターゲットとなる女性は仕事選びで何を重視するのかを分析し、それに合わせたアプローチをするのが効果的です。
例えば「女性がバリバリ活躍している企業が良い」というタイプの人には、女性管理職の存在をアピールします。また「自分と同じような子育て世代が多い職場が良い」という人には、育休復帰率や子育てのサポート制度をアピールする、といった具合です。
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女性採用の推進は企業に多様性をもたらし、労働力不足の解消や企業のイメージアップにもつながります。近年は女性のキャリアプランも変化して、「結婚・出産したら退職する」という人も減少傾向です。
社内の制度を整えることで、女性だけでなくみんなが働きやすく、定着しやすい職場になるので、ぜひ前向きに検討してみてください。
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