近年、採用市場で重要な役割を果たしているインターンシップですが、2025卒から仕組みが大きく変わります。特にこれまで1dayインターンシップを実施してきた企業には、大きな影響が出ると予想されるため、注意が必要です。
インターンシップの形態変化に対応するためには、産学協議会が発信する情報をしっかり理解しなければなりません。
本記事では、インターンシップ形態変化の最新情報や、注意点について詳しく解説します。5分で改正ポイントが分かる記事になっていますので、お忙しい採用担当者もぜひチェックしてください。
25卒におけるインターンシップの変更点
インターンシップとは、学生が社会に出る前に仕事を体験する制度のことです。業種や職種への理解を深めたり、現場の空気を肌で感じたりできるため、学生がキャリア形成を考えるうえで重要な取り組みとなっています。
リクナビの調査によれば、24卒では9割以上の学生が「1day」を中心に何らかのインターンシップに参加しているそうです。
これまでのインターンシップ
これまでのインターンシップは、採用選考とは別物として位置付けられていました。そのため、インターンシップで得た学生情報を採用活動に利用することや、インターンシップで学生を評価することも禁止でした。
しかし、実態としてはインターンシップという名の単なる会社説明会があったり、インターンシップから学生の選考を始めるような風潮があったりしたのも事実です。また、一部の企業では平日にアルバイトのような働きをさせて、学業に支障をきたすケースもありました。
25卒のインターンシップ
上記の課題をふまえて、「インターンシップは選考ではない」という前提は引き継ぎつつ、条件付きで採用直結型のインターンシップも可能になったのが、今回の改正です。
具体的には、今まで「インターンシップ」と呼んでいた取り組みを、期間や目的、実施内容によって4つのタイプに分類しました。今後は、分類したものの中でも就業体験が必須となる2つのタイプのみを「インターンシップ」と呼べることになったのです。
インターンシップの種類と特徴
これまで広い意味で「インターンシップ」と呼ばれてきたものは、正式名称を「学生のキャリア形成支援活動」と言います。25卒以降におけるキャリア形成支援活動は、期間や目的、内容によって次の4つのタイプに分類されることになりました。
- タイプ1:オープンカンパニー
- タイプ2:キャリア教育
- タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4:高度専門型インターンシップ
4つのうち、正式に「インターンシップ」と呼べるのはタイプ3とタイプ4のみとなります。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
参考:何が変わるの? これからのインターンシップ (keidanren.or.jp)
タイプ1:オープン・カンパニー
オープン・カンパニーの特徴は次の通りです。
目的 | 個社や業界に関する情報提供・PR |
代表的な例 | 企業・就職情報会社や大学キャリアセンターが主催するイベント・説明会 |
就業体験 | なし |
所要日数 | 超短期(単日) |
実施時期 | 時間帯やオンラインの活用等、学業両立に配慮し、学生・修士・博士課程の全期間(年次不問) |
学生情報の採用活動への活用 | 不可 |
オープン・カンパニーは、大学を見学する「オープンキャンパス」の企業版のようなものです。これまで「1dayインターンシップ」と呼ばれていたものの多くがこれに当てはまります。
タイプ2:キャリア教育
キャリア教育の特徴は次の通りです。
目的 | 働くことへの理解を深めるための教育 |
代表的な例 | ・大学が主導する授業・産学協働プログラム(正課・正課外を問わない) ・企業がCSRとして実施するプログラム |
就業体験 | 任意 |
所要日数 | 授業・プログラムによって異なる |
実施時期 | 学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)。但し、企業主催の場合は、時間帯やオンラインの活用等、学業両立に配慮 |
学生情報の採用活動への活用 | 不可 |
キャリア教育は、文字通り学生の職業観や勤労観を育てるための取り組みです。具体的には、企業で活躍する人の講演を開いたり、自己理解や仕事理解を深めるワークをしたりといった活動があります。日数に決まりはなく、年間を通じて実施することもありますが、1〜3日程度のものが多いです。
タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ
汎用的能力・専門活用型インターンシップの特徴は次の通りです。
目的 | 就業体験を通じて、学生にとっては自らの能力の見極め、企業にとっては学生の評価材料の取得 |
代表的な例 | 企業単独、大学等が企業あるいは地域コンソーシアム(※)と連携して実施する、適性・汎用的能力ないしは専門性を重視したプログラム (※)地域コンソーシアム:地域研究に携わる日本の研究・教育期間、学会、市民団体などで億世される組織体 |
就業体験 | 必須 (a)就業体験要件 学生の参加期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる(テレワークも「職場」) (b)指導要件 職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後、学生に対しフィードバックを行う |
所要日数 | (C)実施期間要件 (ⅰ)汎用的能力活用型は短期(5日間以上) (ⅱ)専門活用型は長期(2週間以上) |
実施時期 | (d)実施時期要件学業との両立の観点から「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み、春休み)」 但し、大学正課および博士課程は、長期休暇に限定されない |
学生情報の採用活動への活用 | 採用活動開始以降に限り可 |
汎用的能力・専門活用型インターンシップは、採用直結型で実施できるタイプです。最短でも5日間のまとまった時間で実施するため、仕事や企業についてより深く理解してもらえます。
ただし、内容や時期、募集時に開示すべき情報などが細かく決められているのが特徴です。次の章で詳しく解説しますので、企画の際は参考にしてください。
タイプ4:高度専門型インターンシップ
高度専門型インターンシップの特徴は次の通りです。
目的 | 就業体験を通じて、学生にとっては実践力の向上、企業にとっては学生の評価材料の取得 |
代表的な例 | ・ジョブ型研究インターンシップ(自然科学分野の博士課程学生を対象に文科省 ・経団連が共同で試行中) ・高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ(仮称)(産学協議会で検討中) |
就業体験 | 必須 |
所要日数 | ・ジョブ型研究インターンシップ:長期(2ヶ月以上) ・高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ(仮称):検討中 |
実施時期 | ー |
学生情報の採用活動への活用 | 採用活動開始以降に限り、可 |
高度専門型インターンシップも、採用直結型で実施できるタイプです。専門分野の知識やスキルを持った学生と共同研究することで、企業にとっても新たな発見や革新が生まれる可能性があります。
インターンシップを実施する際の注意点
ここからは、25卒のインターンシップを実施する際の注意点について解説します。
- 4類型の趣旨や特徴をふまえて企画する
- 募集要項には情報開示要件の項目を記載する
- リスク管理を怠らない
ほとんどの企業で、形態変化に関して何らかの対応が必要になるはずなので、しっかりチェックしておきましょう。
4類型の趣旨や特徴をふまえて企画する
今回のルール改正で、「学生のキャリア形成支援活動」は4つのタイプに分類されました。そのため、改正点を把握しないまま「何となく去年と同じで…」と考えていると、新しいルールから逸脱してしまう可能性が高いです。
特に「インターンシップ」という名目で採用直結型で実施したい場合は、要件をしっかりおさえて企画しましょう。
募集要項には情報開示要件の項目を記載する
タイプ3「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」を実施する企業は、募集要項に以下の1〜9の情報を開示しなければなりません。
- プログラムの趣旨(目的)
- 実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給/有給等
- 就業体験の内容(受入れ職場に関する情報や事前学習・事後学習をあわせたプログラム全体の概要を含む)
- 就業体験を行う際に必要な(求められる)能力
- インターンシップにおけるフィードバック
- 採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨(具体的な活用の内容も記載することが望ましい)
- 当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模等)
- インターンシップ実施にかかる実績概要(過去2~3年程度)
- 採用選考活動等の実績概要
「6.インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨」とは、例えば、学生の連絡先を活用して選考へのエントリーに関する案内を送付することや、学生の評価を活用して選考プロセスの一部を省略することなどを指します。
リスク管理を怠らない
インターンシップをはじめとするキャリア形成支援活動を実施する際は、リスク管理も重要です。実施中に考えられるリスクとして、学生のケガや情報漏洩、ハラスメントなどが考えられます。
いずれも、事件・事故が発生してから動いたのでは対応が遅れてしまいます。万一の場合に備えて、労災の適用範囲の確認や情報セキュリティの対策、社員のハラスメント教育などを万全にしておきましょう。
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インターンシップをはじめとするキャリア形成支援活動は、企業が学生と接点を持ち、自社の魅力をアピールする貴重な機会です。25卒からは採用直結型のインターンシップが可能になったため、新卒の獲得競争が激化する中での重要性は増しています。
一方で、採用担当者の中には「自社の知名度が低くて学生が集まらない」「専門知識を持った理系学生とどこで出会えるのかが分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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